『ココロコネクト』秀逸なヒネリと超高度な演技はアカデミー賞もの。
かつてあまりにも『けいおん!』に傾倒しすぎた私、同じキャラデザイナーによる『氷菓』同様、絵への拒否反応からなんともとっつきにくくて、半ばを過ぎた放映中のシリーズを今更ながら観てみました。
というのも、どうせ観ないなら今の時点で録画予約を止めて、録ったものも消してしまおうと思ったから。
ところがです!( ̄ロ ̄lll)
一話のAパートの終わりまで観た私は、あやうく大変な過ちをするところだったことに気づきまして。
一話は物語の中核となる怪現象と、それに巻き込まれる登場人物たちの紹介編。
最初に彼らの他愛ない日常の紹介から“異常”に出くわすまでを描く、セオリー通りの展開。しかもその“異常”は、今ではさして珍しくもない、『男女の人格の入れ替わり』という、ありきたりなネタだと分かると、本当のところ、かなり急速に興味が失せるのを感じてしまいました。
でもとりあえずせっかくなんでながら観でも一話だけは終わりまで観とこう…と思い直しました。
しかし。
Aパートの終わりにその “ありきたりな”はずの“異常”は、ほんの少しヒネった事によって、衝撃的な新展開となってたんですよ!!
そう、まるで合気道の達人がちょっと相手の手を取っただけでドウと投げ飛ばすにも似て……ほんの少ししかヒネってないのに、そのアイデアは私をガッチリ掴んでしまいました。
同時にタイトルに付けられた『ヒトランダム』の意味を知りました。
バラしてしまうと『人格の入れ替わりはひと組でなく、しかも五人の間でランダムに発生する』。というもの…ね?ほとんどヒネってない。
なのに信じられないくらい衝撃!「その手があったか!…なんで気づかなかったのか」と。まさに盲点。
もともと弓月光先生の『ボクの初体験』、大林宣彦監督の『転校生』以来、男女の人格入れ替わりネタは数々ありました。
また、他者の人格がいくつも一人の意識の中に入ってくる話も80年代に新井素子氏の『あたしの中の…』で経験済みです。
でもそれらは全部、別人の身体になった(または別人格が入って来た)という話が主であって、それが故に得られる結果は直球勝負に近いもの。
しかしさすが『ココロコネクト』はラノベなんですね。同時に私はラノベというジャンルを誤解してきたことにも気づきました。
Wikipediaに依れば、ラノベとはライトノベルの略である───という以外の定義は曖昧だとされてますが、私が感じた認識としては、かつての『集英社コバルト文庫』のようなジュニア向けの小説であり、同時にコミックのノベライズ版という印象でした。
内容的にもいわゆる中二病に片脚つっこんだ系のものとも…。
しかし昨今、私が気に入って観てた深夜帯アニメ作品群のうち、ラノベ原作が非常に多く、その内容をそのままコミックにしたとするとなんのことはない…わが青春を賭けた、少女マンガの物語構築法そのまんまなんですね。
他との差別化のためにも、そこへオカルトだのSF要素だの、さまざまに奇抜なアイデアを持ってくるんですが、それを物語の軸にではなく、単に敷物または壁紙としてサラッと使ってしまうところがラノベのすごさ。
つまりお話の軸やテーマは、あくまで若い主人公たちの幼い青春物語であり、群像劇である所なんですね。
こんな器用なマネ、オトナの小説には逆立ちしたってできません。
だから宇宙人が攻めてこようが超能力に目覚めようが歴史がでんぐり返ろうが、ラノベの主人公たちはひたすら、恋と好きな相手への焦がれんばかりの想いと悩みに終始するわけです。もう世界も宇宙もその下の下にランキング。むしろ “二人のため世界はあるの” 状態。
これこそはまさに少女マンガの筋立て。少年漫画にはまずない展開ですね。
いや、私は少年漫画を読んでこなかった属性なので異論はあるかも知れませんが、少なくとも心の機微や恋に悩む主人公の日常を軸にしたのでは、少年漫画としては成り立たない。スポーツだろうが戦いだろうが、はたまた単純にHしたいだとか、もっと別の目的ありきなんですよ。
ようするに少年は文字通りガキですからね。
同年代の少女の心のレベルに達するには、最低10年は経験を積む必要がある。だから野郎はそういう女の子の感覚には永遠に追いつけないんですな。それはともかく───。
最大のヒネリである、『離れていようと突然五人の誰かと入れ替わる』わけですから、どうしても互いの生活やプライベートに関わることになります。
これまでの『入れ替わりもの』は性的なり立場的なギャップで笑いを取るのが精一杯でしたが、『ココロコネクト』の場合は数歩進めて、本来なら声に出しても相手に通じないはずの、それぞれの想いや立場の違いをダイレクトに体験して受け止めることで、少しずつ解り合えるようになるという、生長物語になってる所が実に深い。
そしてアニメとして映画として、この作品で一番感心したことがあります。
繊細な作画による動演(=動画演技)はもちろんですが、なんといっても主人公たち5人の声を宛てる声優さんたちのチカラは実に大きい。
大林宣彦監督の『転校生』が大成功した最大の要因は、ココロが入れ替わった男女それぞれの演技力。
なんせ小林聡美さんが演じてる女の子は、入れ替わってる間はどうあろうと観客にとって女装の男子にしか見えないといけない。逆の尾美としのりさんもまた然り。ここが演技に見えてたらあの作品は失敗した。
しかも『ココロコネクト』の場合は、五人の男女がアットランダムに入れ替わるというとんでもない話。
ということは、演じるべき本来のキャラクターの把握は勿論のこと、単に性別の逆転だけでなく、五人がそれぞれの立場や性格をもとに、他の四人分の役柄を演じ分けなければならないのです。
本来のキャラごとの口調やクセは当たり前として、個々の人格からにじみ出る、そのキャラならではの話し方や考え方すらも把握していなければならない。
そうでなければ上っ面だけの演技になり、人格の入れ替わりという事象を観客に納得させることなど不可能。
まさに声による演技の本質を問われるのです。
ましてアニメは絵です。
絵であるから入れ替わった “らしく” 顔つきなどを変えて描けばいいんですが、それをしてしまうと逆に入れ替わりが見え見えなので不自然。
だからここもあくまで、入れ替わったからこそ感情表現や動きによる『動演』でそれを表現しなければならない。
───こんなに高度な芝居を要求されるアニメがかつてありましたかどうか。
この作品は、一般の役者がたまさかの仕事で声を当てた程度の、うわっつらレベルの演技では絶対に不可能。
いつかこの作品の声優さんや監督さんからそういった苦労話が聴けたらさぞや楽しいでしょうねえ…まして声優を目指す人にとっては修行を積む上で天の声となること間違いなしです。
実は驚天動地の二話に関しても書きたいんですが、例によって長文になりすぎました。
ちうことで次回に廻したいと思います。よかったらまた読んだってください。
(≧∀≦)/ ほな、また。
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コメント
ちなみに放映は13話まで配信で17話完結という噂でしたが、、どうもそうなりそうですね、公式サイトのDVDリリースを参照してください。
最後まで見たければDVD(ブルーレイ)買いなさい、と言う事でありましょうか、、、’
ニコニコ動画で配信されるかはまだ未定のようですし、、
投稿: ざんぶろんぞ | 2012.08.15 21:59
ざんぶろんぞさん、毎度です!
いつも情報感謝です……なんですとー!そんなややこしい事になるんですか。
まあ今の持って行き方を見るに、のこり4話がまた小説一冊分のエピソードなんでしょうね。
逆にそういう切り分け方なら、その分はレンタルを待つと云うことで。
投稿: よろづ屋TOM | 2012.08.15 23:59
ココロコネクトが本編とは関わりの無いところで炎上中です、、
>菊地創(eufonius)
で検索してください、詳しくは説明しませんが
「ココロコネクト、ドッキリ事件 」と言うのも酷い話です。
投稿: ざんぶろんぞ | 2012.08.29 00:07
ざんぶろんぞさん、毎度です!
知ってる知ってる…なんか、文字通り“情けない”話で。
ただ件の人ほどではないにせよ、自分もよく傲慢になるし、気づかないうちに似た事をやってないかと思うとゾッとします。
病は口より入り、災いは口より出ずる。
常に相手の立場と気持ちになって気をつけねば、と自戒することしきり。
投稿: よろづ屋TOM | 2012.08.29 09:34