『日常』それはこれ以下がありえないナンセンスをこれ以上考えられないマイスターが描いた現代芸術。
こんだけ書いててなんですが、原作はじぇんじぇん知りませっしぇん。あくまでアニメ作品『日常』としてのみで語っております。
この作品の凄みがどこから来てるのかと考えますと、やはりそのスタンスだと思います。
前回も書きましたが、『日常』は最初っから観客に理解してもらおうとか、されたいとかなんて世俗的な作り方はしてはりませんな。
さりとて「ついて来いよ〜」「ついてこられるヤツだけ来ればいい」なんて傲慢さもない。
ただただ、丁寧に丁寧に、これでもか、これでもか、と、真っ赤に燃輝く鉄の塊に己の職人魂が納得ゆくまで、ひたすら鎚を振り下ろし続ける刀鍛冶のように、我が道を征くその方針のぶれない所は心底から見習いたいもんです。
とはいうものの、動画や背景だけでなく、脚本の隅々にまで配慮の行き届く京都アニメーションならではのきめ細やかさはちゃんと活かされている。
この作品には、しっかり四コマならではのリズムがあるんですよ。
こう、起・承が、とん、とん、と来て、がん!がああああん!!…と転・結が来るという、世界最短の物語ならではの。
だから内容がどぉおおんなに支離滅裂で無茶苦茶でも、エネルギッシュな動演(動画による演技:筆者による造語、拡散希望ちう)と迫力の勢いでしっかりエピソードの区切りが気持ち良ぉ〜〜〜〜く、すとんと入ってくる。
なにせ京都アニメーションのうまさのひとつは、偉大なる故・桂枝雀師匠が提唱されていた、『笑いの緊張と緩和の理論』が見事に体現されている所でしょう。
およそ世界の追随を許さない超高等技術で描かれたウルトラスーパーマーベラスギャグアクションの合間・合間に挟まる『静』の部分になると、それこそジブリをしのぐ叙情性でファンを魅了する、京都アニメーションの真骨頂発揮ですね。
あまりにも普段が変すぎるので、ちょっとした人情ネタが砂漠で見つけた一個のキンカンみたいにみずみずしく思えて、妙に感動させられてしまいます。
そしてまた“箸休め”のあとには再び無茶苦茶なギャグとオチが用意されている。
画面こそ分けたりしませんが、時間進行がまるで『24』みたいに同じ時間軸上の異なる場所で同時進行してるみたいな構成が多いことも『日常』の特徴でしょうね。
おそらくは他の並み居る同じ23分ほどの作品でありながら、なぜか時間の流れが他のアニメとは違って、やたら長いような感じさせられたことはありませんか?
もちろん、退屈だから長く感じるとかではなくて、話の切り替わり時やCMタイムでフト我に返ったりしたときに、「あれえ?(´。`)今夜の日常、30分以上あるような…まさかなあ」って思った事ありませんか?
昔と異なり、OP 〜 CM 〜 Aパート 〜 CM 〜 Bパート 〜 ED 〜 CM 〜 予告編という定番進行スケジュールなどとうに消滅してることもあるのと、エピソードじたいは起承転結のテンポを守りつつも、それを指揮するタクトの速度はときに速く、ときにゆっくりと振られてるので、なんとも不思議な時間感覚になるのです。
本来、もとが四コマまんがの作品だと、どうしても元のネタがごく短くぶつ切り気味な筈なので、それを繋げて一本にしようとしても、基本的にオムニバス的な繋がり方にならざるを得ないんですね。
しかし普通のプロダクションなら、無理に繋ぎのエピソードを新作してでも繋がってる話に見せ掛けようとするのが人情ですが、ギャグとしての単発ならそれはそれでいいかな、みたいな作り方してるのには驚かされます。
むしろ、まったく無関係なシーンでの別展開すら平気でやってのけてるし、そういうエピソードが所々に挿入されてるお蔭で、かえって『日常』の主人公たちが生きている世界観というか、彼女たちの生活空間の空気感さえ感じられてしまうから驚かされます。
いや、その“我が道を征く”ど根性、じつに堂々たるもんです。( ̄▽ ̄lll)
そして『日常』の最大の魅力とは。
それは、これ以下が考えられない程くだらないネタにこれ以上ありえない程のマイスター級技術が結晶しているという凄味が毎回々々、腹一杯堪能できる贅沢感です。
だから、必ずまた、観たくなる。
たとえ舌がしびれても、過激なカレーやミントや炭酸がほしくなるように。
《とりあえず今回はこれでおしまい》
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