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2010.05.28

『けいおん』は間違いなく青春もの…だと実感した7&8話。

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「ゑ〜!ちゃうでぇ、それは〜」という声が聴こえそうですが。

 もちろん『バンブーブレード』『とめはねっ』『大正野球娘』みたいな、目標に向かって頑張り、ときに挫折、衝突し、泣き、笑い、また立ち上がって挑む…という“熱血もの”とはかなり違うのはご存じの通り。
 あるいは人によってはこれを『まったり』『のんびり』『脱力系』とカテゴライズするかも知れませんが、その視点だけで観てしまうとこの作品の魅力の半分しか味わえてないように感じるのです。

 ちうかね、もしそれだけなら私、こんなにこの作品に入れ込まなかったと思う。
 いわば『熱血』ではなく『あったかい』青春もの。
 

 いまさらですが、なにせ物語が始まって以来、肩に余計な力が入ったことがない。毎日、毎日をただあるがままに過ごす姿を綴っているだけの彼女たち。
 しかし一方で、すごいな、こんなん今まで観た事ないな、と思うこと、それが彼女たちの『夢』の描き方。
 ここ数年の間でも若向け四コマ漫画を原作にした『ひだまりスケッチ』『GA』『スケッチブック』などがつぎつぎとアニメ化され、そのなんともいえないマターリ系な空気感に癒されてきましたが、『けいおん』だけはなにかが違うんです。最初はそれが分からなかったんですが、二期に入って唯たちが3年生になった時点でハッと気づいた。

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 彼女たちの将来の夢の中に、バンド活動は含まれてないことに。

 たまたま他の三作品は美術科系のお話でもあり、描き手は当然漫画家というその延長線にいる人が描いていることもあって、いわば自身の体験をなぞっている部分も多々あるんですが、『けいおん』ではそういった気配が皆無。
 登場人物の誰一人として、マンガ好きだったり絵描き好きなキャラがいない。むしろそういったキャラクターを避けているようにさえ見える。

 熱血系の話を先に挙げましたが、従来の学園ものには『目標』がつきものなんですよ。というより、目標あってのキャラ作りが前提でしょう。
 そしてドラマが生まれて、その中でがんばりやら挫折やら成功やらが描かれるんですが、どれも全て『夢』を目指す。それがたとえば、その世界の上級者からは取るに足りない試合での一点獲得だったり、大会の優勝だったりと千差万別ですが、なんせ集まった仲間の共通の目標をクリアするべく話が進む(を進める)わけです。

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 ところが!一期で梓が入部してくるくだりでも、二期での後輩探しの話でも、唯たち三年生の卒業はイコール彼女たちのバンド《放課後ティータイム(以後HTTと表記)》は解散が前提になっているんですね。
 こういうスタンスはたぶん他にないのでは?
 もちろん、解散劇そのものを中心に据えた話ならあります。それに至るまでのエピソードも含めて。

 しかし『ひだまりスケッチ』『GA』『スケッチブック』でも、一応主人公たちの将来像として美術系の進学はもちろん、それなりに芸術系を目指して行くことが匂わせてある…というよりも当然のこととして話に織り込まれているんですが、『けいおん』では音楽系の話すら出てきませんね。
 
 学生時代、ひたすらプロデビューを意識してマンガ描いてた私、このことにはものすごく驚きました。

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 軽音楽の大先輩でもあるさわちゃん先生からも「あんたたちプロは目指さないの」という会話もない。まあ《HTT》の実力やプロの厳しさを知る彼女なら当然でしょうが、むしろ8話『進路』でも唯、律のふたりは書くに困ってやむなく進路調査票に“ミュージシャン”と書いたことでも、それが本気ではない事が分かる。

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 部活にせよ趣味にせよ、何かひとつのことに打ち込んできた場合、そこには夢や望みであると同時に目標としてきたものがあると思うんです。
 もちろん、みんながみんなプロを目指すわけではないですが、関係する似た職業につけたらいいな、とか、趣味としてでも続けたいな、という意識はあるでしょう。

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 だいたい、朝から晩までかたときも“ギー太”を手放せないほど、ギターを弾くということ、バンドでみんなと演奏するということに心酔してしまっている唯なのに、彼女の将来像にそういう事は一切念頭にない。
 これまでのキメの細かな演出や練り込まれた脚本から考えると、あまりにも不自然で、あえて触れないようにしての展開に思えてなりません。
 まあ、唯のことですから、“そんなこと考えもしなかった”というノリかも知れませんが、先々どうなるかは観ている側にははっきり分かっていること。

 でも、実は答えをちゃんと分かった上でのことなんだと知れるセリフや行動がある。
 
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 「今みたいに5人のままでもいいかなって思うんだ」と唯。
 
 
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 「みんなといると楽しそうだから。」とバンドに入ったムギ。
 
 
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 少しだけヒトマエに出ることに慣れて、ちょっと積極性も出てきた澪。
 
 
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 飽きっぽかったのにちょっとドラムから離れてるだけで物足りなく感じるようになった律。
 
 
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 いまはみんなとバンドができるだけでもシアワセいっぱいな梓。
 
 
 
 ───もう、5人にとって《放課後ティータイム》が切り離せない身体の一部になってる。
 だけど、最初にバンドを組んだ時に「めざせ武道館ライブ、いえー」なんてぶち上げてたけど、それはなかば大まじめだし、だからといって最初からあきらめてたとか、もう卒業近いからあきらめたとか、そういうことさえ超越してるんですね、この娘たちは。

 むしろ、『いま』みんなとバンドを一所懸命にやることが一番たいせつなこと。
 もちろんセリフでそれを言ったことは一度もなかったと思いますが、これまでの行動がそれを示していますよね。
 
“今が楽しければそれでいいんだ” なんて言えば、へたしたら安っぽい現実逃避にもとられてしまいますが、欲や野望をすっかり切り離した状態で、『いま、このメンバーでバンドをしていることがすごく楽しい』ことがジワ〜ッと伝わるように描いてきた。
 
 そして、これから残りの話数もそのスタンスで彼女たちの《青春》を描いてゆくんでしょうね。

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 男性でも社会に出て、家庭を持ち、歳を重ねるにつれてそうした活動はもちろん、友人たちとも遠のきます。まして女性はもっと顕著。もっとも、さらに年齢を重ねて、家庭からある程度開放されてきたら、また再結成…なんて例もありますが、まあまれと言っていいでしょう。
 でも声には出さなくても、それは誰もが頭の隅っこでは分かっていること。理由はどうあれ、始まりがあれば終わりがある。よほどの特例を除いて、プロになって音楽史上に名を残したバンドもいつかは解散する。

 逆に言えば、だからこそ『いま』やりたいことをやっておかなくてどうするの、ということなんですね。『いま』は『いま』しかない。過去も未来も置いといて、『いま』が『いま』のためにがんばるべき時、だと。
 
 そんな、ひたすら丁寧に丁寧に描かれた彼女たちの日常を追うことは、まるで一枚の布を繰り返し染料にひたすのと同じ。最初は薄くて何色かさえ判らないけど、ひたすたびに少しずつ色は重なり、いつしか観るものの心を鮮やかな色に染め上げてしまう。

『けいおん』はそういう作品。

 全国に女子バンドブームが巻き起こっている、というのもそれが着実にみんなに伝わっているからでしょう。

 なんてことはない。
 
 第一期のラスト、「けいおん、さいこー!」に集約されてたんですね。

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 だから、『けいおん』はすばらしい青春物語だと思うのですよ。

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コメント

けいおん、観たこと無いんです。
でも、TOMさんのけいおんの記事は大好きなんです。
でも、たぶん私はこれからも「けいおん」を観ることは無いと思います。

って、何ですかねーこの矛盾した気持ち。
今日この記事を読んでわかったんですけど
この娘さんたちは、私のトラウマな部分を見事に突いてくるんだと思います。

今しかできないことを今やらなくてどーすんの?

ってことを、少女時代の私はたくさん諦めてきたような気がするんです。
それなりに楽しかったはずなのに
やり切った感がしない。
恋も友情も絵を描くことも
上っ面ばかりなぞってきてしまった後悔。
なんつ〜か、この娘さんたちを観たらね
黒い嫉妬と羨望がムクムクしてきそうです。
アニメに嫉妬するってアホっぽいけど。

いろんなことを諦めちゃって、心から楽しんでこなかった私には
このアニメはTOMさんの記事だけでもちくちくと痛いです。
いや、カサブタ剥がされる思いです。
ああ〜 痛い痛い。
それと同時に、キュッと締め付けられるような懐かしさです。
今日の記事は、なんか涙出ました。

投稿: ビタミン店長 | 2010.05.28 13:51

店長さん、毎度です!
作品をご覧いただけないのは残念ですが、記事を褒めてくださったのはほんまに嬉しいです。

実は私も、“やるべき時にやれることをしてきてない感”がすごくありましてね。だから今とりかえすのにネットで創作活動やってるんだと思います。

以前勤めてたとこの上司がゆーてはったことなんですが、「娘のいる母親は娘の若さに嫉妬する」んだそうで。
自分に似てるけど、自分は老いてゆき、逆に娘はどんどん輝いてゆくことに無意識に嫉妬してしまって、それがために衝突するようになるのだとか。

私は早くに父親を亡くしてるので真偽は分かりませんが、野郎の場合は息子の方が自分の行く末の嫌なところを見せられるために反発する…みたいなことを書いてた人がいました。

それはともかく、ご覧のように私はこの作品から学ぶところがすごく多いのですよ。その学んだことを誰かに伝えられたら、ひとつ、この世でのつとめを果たせてる気がします。

投稿: よろづ屋TOM | 2010.05.28 15:16

1期裏に泣かされてるんで、今期はリアルタイムと録画編集で最低2回は見てますよ!
個人的には、修学旅行の時の唯たちの視点と普段あまり注目されない憂をあずさの視点から書いたのが面白いと思いましたね!
あの唯の意味不明電話が伏線だったとは・・・。
原作では、なかった裏設定まで更に新幹線が700系だったり歯磨き粉にしっかりメーカーとか書いてあったり何度か見るとそこまで入れ込んで作るかと言うくらいアラでなくすごさが目立つ面白い作品ですね。
個人的には一番しっかりしているようで、あわあわしちゃったり変な人形持ってこそこそ逃げたり、変な作詞しちゃう澪が可愛くて仕方ないです。
今回は、面白いと思う反面さわちゃんと憂大変だなと思いましたね・・・。

投稿: ポニ萌え | 2010.05.29 23:11

ポニ萌えさん、毎度!
マルチ視点の構成の面白さはなんといっても『バッカーノ!』で唸らせられましたからね〜。でも作るのは難しい!

しかし6話以降にスタッフが集中したのか、修学旅行の回は作画もアクションも脚本も、わりと普通の作風になってましたね。
ああ、やっぱり大変なんやなあ…というか、これだけの出来映えを毎週維持してること自体が驚異です。頭が下がります。

投稿: よろづ屋TOM | 2010.05.30 14:34

投稿てすと
動画
http://www.nicovideo.jp/watch/sm10832027
まあ穏便に、、、

投稿: ざんぶろんぞ | 2010.06.14 16:22

部活やバンドは彼女達の夢ではなくて、彼女達5人をつなぎとめてくれるものとか、時間を共有するための楽しみの材料として置かれている感じがしますよね。
僕もブログでけいおんについて演出の視点から書いてみたんでよかったら読んでみてください。
それとリンク貼らせていただいていいでしょうか?

投稿: 湯ノ浦ユウ | 2010.06.21 02:15

湯ノ浦ユウさま、いらっしゃいませ&はじめまして!
バタバタしてるためコメント返しが放置状態になってしまい大変失礼しました。

そうなんです、私はクドクド書いてしまってますが、むしろそのおかげでライト感覚でのクラブ活動…みたいな表現になり、同時にこちらが不安になるくらいにアッサリと別れてしまうような不安感もあるんですよ。

ところで、スパム対策のため、U.R.L.を表記すると保留されてしまう設定ですのでご迷惑をお掛けしたようですみません。
ブログのリンクはご自由に。よろしくお願いします。

投稿: よろづ屋TOM | 2010.06.26 12:17

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