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2009.12.12

『ホースメン』全部亜流でしかも支離滅裂。もったいない。

Horsemen01
 『ブツクサ』ではひさびさに文句たれな《ぼやき版》映画の記事です。
 予告編などで出てくる以上のネタバレはしておりません。

 冒頭の数分間だけ観た最初ね、期待したんですよ。これはいいかな、“見せない演出”でグイグイ怖がらせてくれるのかな、と。でも残念。いまどき乱発されてるヘタなスプラッター映画に成り下がってしまった。
 真似だらけ、しかもマネのクセに一本の筋さえ通っていない。久々に時間を無駄にした作品でした。

 お話は、凍った池の上に似つかわしくない物をハンターが見つけるところから始まります。
 小さなテーブルの上に、フランス料理なんかで冷めないように被せてある銀製のドームが載ってる。傍らの木の幹に書かれた「Come and See」の文字。 それにつられるようにフタを取ったハンターの驚愕の表情で暗転。画面変わって、逞しいけどどこかくたびれてる中年男の朝の様子になる。
 起き出してベッドサイドに散らかってる小物を身につけてゆくと、最後に警察のバッヂ。男が主人公で、私服のままバッヂを腰のベルトに挟んだことから刑事だと一目で分かる演出だ。
 キッチンに行くとハイティーンの少年が彼に見向きもしないで独り食事。

───この間、数分。おせじにも上手くいってない家庭であることまで知れる。

 これだけで基本設定の全部を見せてしまう。うまいな、と思ったんです。ここまではね。


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 ところがその直後、今度は眼を覆いたくなるようなおぞましい犯行現場がこれでもかと映し出される。でも見ていて怖いんじゃなくて痛いのね。
 
 モロに画面に映った途端にもうあかんな、と思った。なんで最初のままで見せない演出で通さなかったのか、と開始5分で感心して10分で失望。

 あとはそんな『SAW』みたいな内容と見せ方で最後まで突っ走る。
 最初の5分は誰か別の人が撮ったのかと思うほどギャップがあるんですよ。一体どうなってるんでしょうね。
 起承転結でタッチが全然違う。まるでオムニバス、いろんな人が撮ったシーンを継ぎ接ぎしたみたい。こんなことってあるんですねえ。

Horsemen02

 そんな映画を作ったのは『ザ・ロック』『パールハーバー』『トランスフォーマー』のマイケル・ベイ。
 なるほどね、と思いました。一番ましなのは『ザ・ロック』くらいですかね。でも中身はなかった。『アイランド』も観ましたが、細部はやたら凝ってるのに肝心カナメのお話が宙ぶらりんなんですね。趣味だけで映画を作ってる気がします。その代表格が『パールハーバー』。
 黄金期のアメリカバンザイの戦争映画でもあそこまでヒドくはなかったですよ。

 一応、お話の底辺は旧約聖書になぞらえた謎解きになってる。でもこれも『セブン』というサイコホラーの傑作があるから目新しさもない。
 実はテーマが見えてこない。何を訴えたいのかよく解らなかった、というのが正直な所です。

 どうやら親にかまってもらえなかった寂しい子どもたちの狂った叛乱…みたいな話を黙示録になぞらえて復讐する、みたいな筋書きらしいんですが全くまとまりがない。
 謎解きを壮大なスケールで作りたかったけど作りきれなかったのか、単なるお遊びで監督をやったのか、みたいなレベル。

 内容がそんななのですが、もしもこれの演出を最初のノリで見苦しいシーンを一切出さず、ヒチコックのようなタッチで観客に想像だけで描いてゆけばさぞや恐ろしい、身の毛もよだつホラーになったでしょうし、その理由、原因の描写をデニス・クエイド演じる父親の目線でなく、息子である少年の孤独感、哀しみをもっと中心において描いてゆけば見え見えな結末も必然として浮き彫りになったはず。

 ありきたりな題材でも切り口が異なれば『SAW』や『セブン』に似ててもちゃんと張り合えたはず、いやむしろスプラッターやグロテスクでは不愉快しか描けない、本当の恐怖はドラマ性こそが生み出すのだと真っ正面から斬り込めた作品になり得たはず…と思うと本当に残念。

Horsemen04

 主演はデニス・クエイド。私が大好きなSF『第五惑星』である体験を通してたいへんな人間的成長を遂げる宇宙戦闘機パイロットを見事に演じ、続けて『ミクロの決死圏』リメイクといわれた『インナースペース』の主演も果たすものの、その後はあまり日本では見かけていません。
 実はかなりこの人、ルックスで損してると思うんです。
 けして大根じゃないのに、デビューした時から妙に若い時のハリソン・フォードとキャラが被るんですね。ちょうどハン・ソロの頃のやんちゃでやさぐれたハリソン・フォードがそのままで年取ったような印象がある。
 作品もどこか二流が多い。制作費ではなく、脚本的にね。テレビ映画に毛の生えたようなのが多い。思えば『第五惑星』が一番良かった。あれは別格でした。

Horsemen03

 共演はチャン・ツィイー。いまや中国を代表する国際的女優さんですが、なんでこんな作品に出たんでしょうか。最初から怪しいのが丸わかり。判っててそういう演出してるならまだしも、これと結末と、どちらも「どうだ、驚いたか、意外だったろ?」と素人推理作家がベテラン読者相手に息巻いてるような印象さえ受けてしまいます。

 ちなみにタイトルの『HORSEMAN』、昔西部劇で同名のものがありましたが、ここで出てくるのは黙示録に出てくる世界を終焉へと誘う四人の騎士のことだそう。
 それもいまいち意味が解りませんでしたけど。

 願わくばこの作品を単なるヒントとして、数年後にちゃんとした監督によってリメイクして貰いたいものです。材料だけはけして悪くないんだから。

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