西宮大谷記念美術館『ボローニャ国際絵本原画展』へ行く。
フトこの記事を書いていて気づきました。これが701本目の記事らしいです。
会期をあと1日と残した26日、やっと西宮大谷記念美術館での『ボローニャ国際絵本原画展』に行けました。うん、やっぱり芸術に触れるってのはいいもんです。
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といっても、ついつい画法ばっかし目が行ってしまうんですよね。
どんなやり方で描いてるのか、どこまで描き込んであるのか───
それにしても毎回感心するのは、絵本の絵を描かれる人のイマジネーションって、とにかくすごいということ。
こういうと語弊がありますが、一種の悪夢みたいな世界観が多いじゃないですか。もちろんフツーに緻密な絵や、すんげー可愛い絵を描かれる人も居られますが、だいたいが物語の説明がなかったら意味不明で、妙に陰気な世界の中に不気味なキャラやおぞましい怪物とかが想像を絶する構図で描かれてるようなのがほとんどに思えるのです。
それはウン十年(このフレーズって我ながら空恐ろしくなります)の昔、子供の頃はまだ虫プロが制作していた頃の『ムーミン』でさえ怖くて仕方なかったのに、デザインの専門学校に行き始めてから勉強のために当時の『ボローニャ絵本原画展』に出掛け、はじめて実際にすざまじいばかりの迫力満点な西洋タッチの絵本原画を見た時の衝撃と来たら!
当時は(震災前ね)日本だけの絵本原画展が春、ボローニャ国際絵本原画展が秋…いや、その逆?とにかく年に二回あったんですが、その事を知っても永らく日本だけしか行ってなかった。
ぶっちゃけね、あの欧州ならではの絵本独特のくら〜〜〜いタッチは“嫌い”に近かったですよ。いやむしろ嫌悪感に近い。
だけどそのイメージを描く才能、努力、技倆に気づいた頃からイッキに畏敬の念で満ちましてね。
まあ不気味で“夢見そう”なのには違いないんですが。
今回は2年ぶり…だいたい2年ごとくらいに訪れるんですが、どんどんCGが増えてるんですよね。
ただしCGといっても世間様で考えるような3Dモデリングのアレではなく、私でさえ使ってるPhotoshopとかillustratorみたいな画像修正・画像操作の類。だけど何回か前の時はたしか?応募要項にCGは禁止みたいな事が書かれてたような…。
ま、時代は変わるっちうことですな。
面白いのは他の画材と同じで、CGとしての加工をどこで使うか、はマチマチということ。
ある人はアナログで創ったものをスキャニングした後にデジタルで色をいじったり効果をつけたり、またある人はデジタルで作った素材をプリントアウトしてアナログ作品の材料として使ってたり。
まあ前者の場合はそのまま製版プロセスに廻せるから多少なりとも便利でしょうが、展覧されていた作品のほとんどはかなり印刷屋・製版屋泣かせのめちゃくちゃハードルの高いタッチの絵ばかり。
つまり黒つぶれギリギリのトーンの闇夜表現だの、細かすぎてはたして印刷物としてまともに再現できるかどうか、みたいな。
そーゆー見方で絵本原画展を観るなんて邪道だとは解ってるんですが、実際問題として絵本は印刷であって、手法や製版がデジタルだろーが、印刷プロセスは結局アナログなんですよね。
つまり読み手は作家が全てを賭けて描いた作品を観ているわけではなく、印刷された二次作品を観てるに過ぎないから、思うように印刷物ができあがらないと100%伝わる訳ではないってことなのです。
そこで思い出すのが、日本の誇る歴史的絵本作家・いわさきちひろさんの絵。
原画を観た時びっくりしたんです。すごく暗くて。
でもしげしげ観ているうちにある事に気づいた時、私は思わずうめいてその場に立ち尽くしました。
原画はそれまで観た事のある彼女の絵本とほとんど変わらない発色。もちろん製版印刷・発行は何十年も前のこと、現在よりもずっと印刷による色再現技術は低いのです。
いわさき先生は、最初から当時の製版技術に合わせて色を入れておられたんです。
基本的に原画は印刷物より艶やかに見えるのが普通。顔料だろうと染料だろうと、絵の具にはさまざまな成分があるので、原画に近い状態にしようと思えば蛍光インクとかで多色刷りにして行くしかない(一般的には4色)。
苦手なのがオレンジ色とグリーン。オレンジ色は茶色っぽいのが当たり前。だから逆に言えばこれらの色を使わなければ、従来の4色の印刷で表現しやすい、とも言えるのです。
この事に気づいた時、いわさき先生が画家ではなくイラストレーターのプロフェッショナルだったんだと頭が下がる想いでした。
画家とイラストレーターの大きな違い。それはナマの絵が作品なのか、印刷されたものが作品になるのかということだと思うのです。
画家の絵は印刷された時点で“複製”。でもイラストレーターは印刷物が“作品”。
絵本原画展を訪れる度に思う事です。
ところで西宮市立大谷記念美術館…これがフルネームなんですが、もともと大谷さんという大金持ちの私邸と美術コレクションをもとにできた美術館なので、豪邸につきものの庭園があります。
で、庭にちょこっとだけですが彫像とかもある。
そのなかでいっちゃん有名で判り易いのが───
▲これじゃないでしょうかね。ひとめで岡本太郎大先生の作品と判ります。
で、これの設置されている前の方に───
▲こんなのもあります。どなたの作品かはわかりませんが、失礼ながらひとめ観るなり笑ってしまいました。
というのもね、大阪には超有名なテレビ局キャラクターがおりましてね。
ええ、そこのアナタ。たぶんあなたの頭に浮かんだそのメロディーは私とシンクロしてると思いますよ。
♪カンテ〜〜〜レ♪
近畿圏で民放をご覧になってる人ならたぶん同じように連想される方が多いと思うのです。
彼の名前は『ハチエモン』。8チャンネル、関西テレビの人気キャラです。
近畿圏以外の方でも、大阪難波は千日前にある『なんば花月』に吉本新喜劇や漫才を観に行かれた方なら、お土産コーナーに彼のキャラグッズがたくさん売っていたことをご記憶ではないでしょうか。
しかも番組インターバルやCMの狭間にちょこちょこつっこんである放送局ジングルばかり集めたDVDまで売ってたりして。(同じような企画ものが毎日放送やテレビ大阪にもありますがいずれも傑作。)
はてさて、この彫刻がいつ創られたものか、んでもってこの彫刻の真意はなんなのか。
つくづく、芸術って面白いですよね。
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コメント
あぁ。。いいなぁ。。。ココ最近、生の絵画、原画、演劇、コンサート、ライブ…などなど行ってないよぅ。。。
やはり実物は印刷物では伝わらない波動が出ている気がします。
そしていわさきちひろさんて…そうだったんだ。。スゴ過ぎる。
私が小学生時代、6年間を通じてほとんどの国語教科書の絵がいわさきちひろでした。 ただ、私はあの方の絵ってどれも「悲しい」とか「切ない」と感じてしまうんですよ
投稿: SAK | 2009.09.28 23:22
SAKさん、毎度〜。
私もコレしか行ってませんよ。有料のは。ボンビーですから。演劇やコンサートなんて高くてありえませんし。
あとは百貨店のギャラリーで半分販売目的でやってる個展とか、神戸や京都で見つけた小さな街のギャラリーでの個展とか、とにかく無料のだけ。
先日まで京都文化博物館でやってた『藤城誠二の世界展』スゴく美しい影絵なんですが、以前大谷美術館で観て惚れて、もう一度観たいと思ってたのでそれも目当てで京都まででかけたのに¥1200もしててビックリ…すごく混んでたし、一度観たし、で廻れ右しましたもんね。
ところで絵本の絵って基本的に哀しげですよね。なんでかしら。
めっちゃ明るい、底抜けに楽しい絵ってあまり観た事がない…
投稿: よろづ屋TOM | 2009.09.29 09:31
今年は行かなかったです。
何年か続けて行ってたんですけどね〜
絵力には圧倒されて、ただただ感嘆してしまう。
でも、なんか…癒されない…(;^_^A
すごい生意気なこと言っちゃってますね〜私。
恥を忍んで正直な感想を言ったら、見ていてしんどいんです。
絵本っていっても、あれは大人向けのArtなんやなぁと思います。
やっぱり私には、Artは無理かなぁと思います。
でも、最初から「絵本」と思わずに芸術鑑賞の気構えで行ったら大丈夫なのかも。
投稿: ビタミン店長 | 2009.09.29 23:34
店長さん、毎度です。
(-_-;)あー。そうですね、たしかに癒しはほとんどないですね。
私も技法を盗みに行ってる、というのが正しいかも知れません。
じっさい、「こんなん子供が見てホンマに楽しいのん?」ってのも多かった。ぶっちゃけた話、コワイ、という方が近いですからね。
じつは最近は“無料”で見るギャラリーや百貨店の美術コーナーのほうが得るものが多かったりするんですよね。
案外、技術に走りすぎて魂が抜けている事って多いのかも…
投稿: よろづ屋TOM | 2009.09.30 00:39