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2009.07.18

『涼宮ハルヒの“地獄”』壮大な精神的実験?

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 私は。同じ事を繰り返すことが何よりも苦痛なヒトである。
 ぶっちゃけた話、ルーチンワークが何よりも苦手だったから、毎回毎回なにやら違ったことをしないとイカンよーなこの広告デザインなんつー因果な商売を選んで四半世紀なのだが。
───などと、キョンのような口調で始めてみたりなんかして。

 というか彼の口調は真似しやすいんですな。一人称形の小説として説明もしやすいし。また、そのトーンがものすごく合うのがこの涼宮ハルヒの憂鬱』という摩訶不思議なアニメで。
 前シリーズもたいがいでしたが、それにしても今回はほんとにとんでもないことをやらかしています。ご覧になってます?
 

 


 ……というのも、とにかく前代未聞なこと(放映順不同とかメディアのマルチ展開とか内容とか)ばっかしやっては超話題だったのが旧作『涼宮ハルヒの憂鬱』だったんですが、今シーズンからの放映も一般的な続編新作制作というスタイルではなく、旧作再放送に新作を織り込んで新構成作品として放映するという、これまた前代未聞の方式を採用してるわけなんですが、話の内容もさらに更に前代未聞な展開になっている。

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 それが今、まさに放送まっただ中の『エンドレスエイト』と題されたエピソード。

 この四半世紀前に関西限定で放映された超人気深夜番組みたいなタイトルの内容をネタバレ承知で書きますと、夏休みもあと二週間を切ったある日から末日までのSOS団の活動がえんえんと無限に繰り返されるというお話。原因は、例によってハルヒの無意識下の願望。

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 そうした“時間のエンドレスループ”をテーマとしたお話は、1999年に当時まだ「誰この美少女」状態だった頃の二十歳の仲間由紀恵ちゃんが出ていたKinki-Kidsの堂本剛君主演のドラマ『君といた未来のために 〜I'll be back〜』や佐々木淳子氏のコミック『霧ではじまる日(ブレーメン5:4巻収蔵)』はもちろん、数知れぬSFの世界まで併せるととりたてて珍しいネタというわけではないんですが、では、それをほとんど変わらない内容とシチュエーションを保ったままで何度も何度も(現時点で既に5回)しかもおそらくは全て新作された作品となると、この作品がもしかしたら最初かも知れない……と、イカンイカン。まだキョン風な口調になってますね。

 えーと。戻れ、戻れ…

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 先の『君といた未来のために』は主人公が事実と因果関係を知っているために、毎回少しづつ異なる運命を辿るお話なので事実上普通のドラマづくりと変わりません。
 タイトルを失念しましたが、アメリカのテレビ用映画として作られたとあるSF作品では、結果として時間ループになるという結末なので、それまでのシーンをカットバック、フラッシュバックで見せてるだけでした。

 ところが今やってるハルヒは、同じ台詞廻しはあえて残しながらもト書きのタイミングを微妙に変えつつ、カット割りやレイアウト、そして演出と衣装デザインは毎回完全に(長門など制服姿は別として)やりかえているというトンデモナイ制作方法を採っているのです。

 しかも今で五回目。タイトルからして、この調子だともしかしたら本当にこんなことを8回もやるのか!?…という恐ろしい予感すら感じさせております。
 エイト、に別の意味があるかも知れないんでそれは明言できませんが、まだ一週間空けて観るからマシなものの、録画したものを続けて観ると本当に頭がヘンになりそうになるし、逆に一週間空けたとしても、今度は記憶が混乱しはじめて主人公キョンが味わっている既視感のような奇妙な感覚に襲われ始めるのです。
 しかも、作り手が苦心して毎回きちんと絵ヅラを変えているにもかかわらず、お話的には全く同じで進展していないので本当にウンザリしてくる。

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 お気楽にテレビを観ているこちら側でさえそんなだから、作ってる方はもっとウンザリでしょう。
 もちろんお芝居というのはリハーサルに継ぐリハーサルの後にようやく上演されるものだし、ロングランの舞台芝居にいたっては信じられないくらい同じ事を毎日毎日繰り返すワケなので、もしかしたら役者にとってはそんなことは苦ではないのかも知れません。

 しかし、それでも舞台芝居なら一応は一本の同じ物語の延長線上で脚本や演出上の問題点を修正しながら日々向上・進化しつつ演じてゆくのが前提ですから、今回のハルヒのようにそれぞれの『エンドレスエイト』をあえて異なる再演世界として個々を差別化するためとはいえ、微妙にタイミングや演出などを違える事によって、さすがの役者さんたちも一体どのリハがどの芝居の回のもので、どの回のための演出によってどの芝居を演じ分けたのかさえ、ワケが分からんようになってゆくのではないか───と思うのです。

 そしてもしかしたらそういう“混乱”さえも創り手の狙いのひとつなのかも知れませんし。

 そもそも、アニメーションという映像芸術も無限とも思える数の止め絵を描いて描いて描いて描いて描いて、描いて描いて描いて、また描いて描いて描いて……の連なり。
 そこにあるのは、向かい合って立てられた二枚の鏡の間を覗いたような果てしのない世界。

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 お話の中では、時空を超越した存在という設定の▲長門有紀だけが、その無限(放送では三度目になるループは実は15,499回目になるのだそうな)とも思える繰り返しの全てを記憶しているという、気の遠くなるような恐ろしい設定。
 そして我々視聴者はそのうちのたった四回を体験しただけでも、彼女が体験している地獄のような耐えられない感覚を味わうことになるという、とんでもない仕掛けの作品になっているのです。

 しかも、まだ続く。少なくとも現時点の放送分は視聴者にとっては五回目。

 今期の放映が終わって、この話が何本続くのか分かっていたら多少は見方も変わるでしょうが、それが分かっていない今の時点では、まさにハルヒを除くSOS団の面々の絶望的な気分もじっくりと味わえるわけです。


 一体、この先どうなるんだろうという好奇心が勝つか、エジソン&リュミエール兄弟が映画を発明して以来の映像作品史上、奇跡のようなありえない企画構成によって生み出されたこの怠惰感にどこまで堪えられるか。
 たとえ毎回、一種のまちがい(?)探しでわずかな楽しみを見つけようとも、その相違点がどの回とどの回との違いなのかさえいずれ混乱してしまうのも時間の問題。

 ある意味、これは偉大で壮大な知的実験だと言えます。

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 精神科の専門医とかがご覧になってたらかなり興味ある意見が聞けるのではないでしょうか。
 ハルヒは海外にも広く知られ、人気も高いのできっと日本よりもアチラの偉い先生が大騒ぎしそう。

 それにしても───

 よくもこんな怖い作品が作れたもんです。下手なオカルト映画よりずっとゾッとしますね。
 これほど濃密なSFマインドを備えた映像作品は久しぶりです。のこり数回、ちょっとアタマがヘンになっても堪能させて頂きましょう。
  
 いや?もしかしたらすでにあなたも私も、何度も結末を観たことがあるたのかも知れませんよ…

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コメント

アニメのハルヒは見た事無いのですが(小説は一巻だけ読みました)、この話の噂を聞いてアニメのハルヒに興味が俄然湧いてきてたとこです(゚▽゚*)
五週以上も同じ話を続けるなんて、スゴイ度胸ですね!!

時間ループものといえば、新スタートレックでもありましたね。
毎回ポーカーしてるシーンから始まるお話。
定番ネタですけど、面白いですよね>時間ループもの。

投稿: スミレ | 2009.07.18 19:49

スミレさん、いらっしゃいましぃ!
私は逆にほかのメディアのハルヒを知らないんですよ。新スタートレックも飛び飛びしか観てないから多分それも…。
でもそうして興味を持って頂けたなら記事書いた甲斐がありました!!!

ヽ(´∀`*)ノ お一人様ごあんないぃいぃ〜〜〜

時間ループものって場合によっては手抜きもできるのに、ハルヒはさすがハルヒでした…
ご存じかも知れませんが、前のシリーズ放映の際は順番さえわざと無茶苦茶だったのです。つまり今週は先週の続きでさえなく、三話連続の話がバラバラという破天荒な展開で。
今回の放送では逆にそれを順番通りにしたからそれはそれでまた驚かされて。
ぜひ前のシーズンもご覧ください。どこからでもOKですよ。

投稿: よろづ屋TOM | 2009.07.18 21:38

最近やっとちょろっと見始めた…程度にしか観ておりませぬ。
前々から気にはなってたんですが、昨今のメディアミックスの激しさにどこから(アニメ、漫画、小説モロモロ。。)手を付ければ? と思って身動きが取れなくなる前時代(昭和)人間。

でも佐々木淳子さんの名前が出て来たからにゃ黙っていられませんでした(笑) 過去激ハマりした漫画家さんの1人であります。

ところで、1つ質問なのですが。。。
TOMさんて「SF大会」参加したことございますか?
私はおととしの横浜でのワールドコンに行ったんですが、SF好きなようだからもしや。。。と思って(笑)

投稿: SAK | 2009.07.18 23:07

おおっ。SAKさんもひっぱりだせた〜〜〜(≧∀≦)9
でもこんだけヤイヤイ書いてますが、私もハルヒは途中参戦なんです。
今でこそ絵のモデルにとfigmaで長門が春・冬二人とハルヒも居ますが、最初あんまり興味なくて。

先のスミレさんへのコメにも書きましたが、このアニメはほんまにどこから観ても面白いです。最初困惑しますが、ワケが分からんからこそ、分かってゆく面白さが快感になるという、創り手の罠に落ちまくってナンボの作品です。
しかもこれは学園ドタコメに姿を借りたかなりハード系なSFだからスゴイ。

佐々木さんは私もハマりました。ダークグリーン以外(当時予算不足)WHOやぱふの特集号まであります。
でも、人混み苦手なんでSF大会どころか東京にも行ったことないです。私の脳内地図に関東八州は空白。(でもFLASHでネット用にお台場のマップ作る仕事しましたが。)都会と人混みは大阪だけで充分ですわ…

投稿: よろづ屋TOM | 2009.07.19 00:14

よろづ屋TOM 様
ひょんなご縁でこちらのサイトを知りました。
どうぞ、よろしくお願いします。

アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』に関しては、私のサイトでも(まことに私的に)勝手な言及をしておりますが、よろづ屋TOMさんの冷静な評論には感心しております。
 
私は今般の「ハルヒ・ループ」ネタには既に感情的になっております(笑)。 
 
ちゃんと結末を見届けないと軽々な判断が出来ないことを百も承知で(製作者の思惑通り?)、もう、
 
(ノ* ̄m ̄)ノ === ┻━┻ ┻━┻ ┻━┻
 
卓袱台、2~3個ひっくり返してます(笑)。
        
今は「ハルヒ」のことなんかより(笑)、よろづ屋TOMさんのイラストの可憐さや、小説コンテンツまで、その他色々膨大な情報量を取りそろえているサイトに圧倒されています。
アクセスカウンターも現時点で52万以上って凄いですね~。
 
また時々、覗きに来させていただきます。
よろしく。(* ̄∇ ̄*)

投稿: 原口清志 | 2009.07.20 21:01

はっっっっ。原口先生!!!!Σ( ̄ロ ̄lll)// 
うへー。お越しくださるなんて。しっかもコメントまでありがとうございます!
マスターさんに感謝せにゃ……(-人-;)ダンニャワード!

え。冷静ですか?結構コーフンして書いてますけど…というかスタッフの限りない根気に感心してるというべきでしょうか…。
ところで先ほど『5回目(厳密には15,521回目)』を観たところですが、新展開あったように思えたんですが。ラストの「じゃ、明日は予備日だけど…」を何故か三回フラッシュバックで繰り返した、あそこです。
これまでも仕掛っぽいカットなどがありましたが、これこそはなんか意味ありげな気がします。5回+3回で8回。

もしかしたら次回はいきなり別のネタやったりなんかして…で最終回でほんまに火星人が出てきてハルヒに挨拶を…。(これがループ抜けの答えかなあ)
でも映画でもそうですが、私はどうも穿ちすぎる傾向がありますんでドー成ります事やら。

プロ作家の方にお褒め頂けるほどの絵や話ではないですが、お楽しみ頂けたら無上の幸いです。こちらこそさっそく超ウダウダコメント書き込んで申し訳ありません。
でも「来るな」と言われるまで、またお邪魔しますんで、こちらこそよろしくお願いします。

投稿: よろづ屋TOM | 2009.07.21 00:15

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