『アイアンマン』それなりに面白いけどネタは古くさいなあ…
なんちうか、ネタもアイデアも枯渇したハリウッドを象徴するような作品やなあと思ってしまった…いえね、これが20年前ならきっと夢中になったかも、って完成度だと思うんです。でもそれでもテレビシリーズどまりかしら。
大スクリーンでやるほどの内容ではなかったなあ。
お話はもお、予想もできるし最初から解ってるし、やっぱりそうでしょ、みたいなものなので今更バラスにも及びません。
要するにパワードスーツを自分で作ってしまった大富豪は兵器製造の大会社の中年やり手社長で、ある事から体内に生命維持装置を埋め込むハメになるんですが、この装置が人間の生命を維持するだけでは有り余るほどのエネルギーを持っていて、それをパワードスーツを動かす動力に転用した結果がかの姿。
それまでは死の商人だったのが一転して武器を憎む正義のヒーローとなるわけです。
ここら辺はいかにもアメリカ人が振りかざしそうな安っぽい正義感で笑ってしまいます。一応ちびっとは自分のしてきたことを悔いているっぽい台詞はありましたけどね…ダイナマイトを発明したために終生罪悪感にさいなまれた挙げ句にノーベル賞を創設したオヂサンの事を思うとずいぶんみみっちいんですが。
けどね、日本人の感覚から言わせていただくと、いくらなんでも軽すぎますな、この主人公。
お前が死の商人やってたせいでどんだけ死んだと思てんねん、って言いたい。一応まるでアフガニスタンかコソボ自治区かみたいな村のシーンも出てきますが、もっともっと自分の犯した罪や亡霊に毎夜毎夜うなされても良さそうなもんです。てか、ウナされろよ。苦しめよ。良心がホントにあるのなら、のたうち回ってしかるべきだし、そういうシーンをワンカットでも入れるべきです。それがないからホントにこの主人公、軽い軽い。
故意にせよ事故にせよ、人を死なせておいて記者会見でゴメンで済ます連中そのもの。逆に言えばボンボン上がりのCEOらしく描かれているのか…いや、そこまで考えた脚本とはとても思えませんな。
このへんがやはり侵略戦争で国をつくり、戦争で経済大国になり、戦争でそれを維持してるだけのことはあるな、と思わずにいられません。
このドあつかましい感覚がアメリカをして広島と長崎を消し飛ばし、ベトナムでダイオキシンをまき散らし、イラクで劣化ウラン弾で汚染しまくって今なおとどまる事のない軍事経済でのし歩く押しつけ正義の国として君臨しているわけで。ある意味アメリカという国こそがダーティヒーローなんでしょうね。
設定もどうも亜流。姿やシチュエーションで思い出すのは『ロボコップ』だし、超兵器をもって他者の武力を無効化するという思想はまさに『沈黙の艦隊』の海江田艦長か『機動戦士ガンダム00』のソレスタル・ビーイング。
まあアメコミの原作は知りませんので、『アイアンマン』のほうが元祖かも知れませんが、実際問題としてたったひとりで“紛争への武力介入”を考えてヒーロー気取りとは、まさにアメリカ産“カートゥーンならでは”ということなんでしょうね。
武力介入で結局またバカスカ人が死んでいるわけですし。
しかしそんな風にこの作品に政治的要素やモラルを交えてしまうには、アメリカのこうした空想系作品の制作者や漫画文化はあまりにも幼いのでしょう。
それでもあれほどの超能力を持ちながら、ローカルエリアで人助けをしてる程度で英雄気取りになってるスーパーマンなどの事を思えば、それでもずいぶん現代風に進化したといえるのでしょうが。
逆に日本はなんて遙かな高みまで進化してしまったことか。
平成『ガンダム』や『コードギアス』で描かれる政治背景と駆け引きの数々は、これから政治屋を目指そうとする人にとっては素晴らしい初級〜中級教科書になる程の内容じゃないでしょうかね。
もちろん、現実の政治はまったく話にならないレベルなのがなんとも情けないけど。
もっとも、そんな風にアメコミをムツカシク観ようとするのは邪道、ってこととしても、もうちっと観客をイイ意味で裏切る話の作り方をしてもバチは当たらなかったのではないでしょうかねえ。
いや、その単純さがアメコミの魅力なんだよ、と仰られたらなんにも言えないんですけど。
主人公のメカデザインはまあまあ好みかしら。色や雰囲気がJRのサンライズ・エクスプレスに似ているから?
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コメント
メカデザイン・・・つや消しで落ち着いた雰囲気を醸し出していますね(笑)♪
投稿: さくら | 2008.06.11 09:19
ははは。なにかとぶっ壊れたネタで、なんともコメントのしよーがないのに、わざわざありがとね〜さくらさん。
投稿: よろづ屋TOM | 2008.06.12 01:16
こんにちは、よろづ屋TOMさま♪
意外に楽しみにしてますよ、「アイアンマン」。
原作のアメコミはもちろん読んだことないですけど、まぁアメコミですから…。
過度な期待はいたしません。
でも最初に予告編を観た時は、「ロケッティア」が現在のCG技術でリメイク? …って思っちゃいました(笑)。
だって、デザイン似てるし、空飛んでるし…。
メタルヒーロー(宇宙刑事とか)のハリウッド版だと思えば、楽しめるかしらん?
投稿: ともや | 2008.06.15 17:43
ともやさん、毎度!
先日知ったんですが、日本公開はこの秋だそうです。ロケッティアね!たしかに仮面の眼は細いし、飛び方もその練習過程もよく似てましたねえ。
違うのは中身がオッサンやっちゅーことです。
私はテレビシリーズとして観たいなあ。それなら絶対ファンになります。そういうスケールなんですよ。
しかし最初このデザインを見たとき、まさか飛ぶとは思いませんでしたんでびっくり。そうそう、この映画もエンドロールのあとに「ほげげええ〜」なオマケシーンがありますからね。このこと、秋までお忘れなく。
投稿: よろづ屋TOM | 2008.06.16 23:24
こんばんは。
ほんとだ。似ている。
まさか
よろづ屋TOMさんが「鉄」だったとは!?
投稿: えい | 2008.07.26 22:51
えいさん、毎度です。
≫よろづ屋TOMさんが「鉄」だったとは!?
うーん、フツーの電車好きです。私なんかが鉄を名乗るのはおこがましいです。
てか、メカにおける私の専門はレシプロです。強いて言えば“鉄羽根”?
投稿: よろづ屋TOM | 2008.07.27 02:41
こんばんは、よろづ屋TOMさま♪
映画を観るにあたって、いろいろと原作情報を調べ始めてるんですけど、意外と古いんですね、アイアンマンって。
1963年登場だから、もうじき半世紀なんですね。
キャプテン・アメリカ率いるアベンジャーズに属していて、スーパーマンやゴーストライダーと仲が良くって、スパイダーマンに強化スーツを作ったり、ハルクと戦うためのスーツを別に作ったり…。
用途に応じていろんなスーツをひょいひょい作っちゃうみたいですね。
(↑玩具メーカー大喜び?)
本当なら原作のアメコミも読んでみたいんだけど、こういうマイナーな奴って翻訳されないし、洋書で売ってるのってめっちゃ高いんですよね。
投稿: ともや | 2008.08.21 01:09
ああ、やっと返事が書けた。ともやさん、毎度ッス。
(;´д`;)ぶっちゃけ、もお話のスジも忘れてしまいそうです。
ゑ〜?1963年?昭和38年!? 新幹線開通、東京オリンピックの年ですか。ウルトラマンより古いんですか。そらすごい。
…でももう一度観るか?って言われても「時間勿体ないからもおイイです」って程度なんですよね…
投稿: よろづ屋TOM | 2008.08.26 16:56
こんにちは、よろづ屋TOMさま♪
原作だとちょうどベトナム戦争の頃が舞台なんでしょうね。
たぶん発明家っていうのは、作り上げた物がどう使われるかなんていうのは基本的に考えないから…という好意的な解釈で鑑賞しました。
根本的にアメコミを鑑賞する時は、楽しみにはするけど過度な期待はしないので、『ふ〜ん、こんなヒーローなんだぁ…』という感想ですね〜。
続編は…というより、他の作品とクロスオーバーした「アベンジャーズ」が楽しみですね。
投稿: ともや | 2008.09.24 12:25
ともやさん、毎度です。
発明家というよりもアメリカ人が、でしょうね。
武器は殺戮のためにこそある。軍隊は戦争するためにある。これが真実です。
昔『ソルジャー・ブルー』という西部劇の傑作がありましたが、あの主人公の青年(第七騎兵隊に所属し、心ならずもインディアンの虐殺を強要され、拒絶したことで裏切り者として逮捕…おそらくは処刑される結末)の思考回路こそが正常な人間だと思います。
投稿: よろづ屋TOM | 2008.09.24 19:04
こんにちは!
おっしゃることは尤もなことだと思いますが、私は楽しかったです(^^)
強いて言うならば、「ダークナイト」が「ガンダム」や「コードギアス」に近いとすれば、こちらは最近アニメ化がはやっている「ゲーム」というところでしょうか。
まぁ、一旦嫌悪感を持つとアレコレと鼻について好きになれないものですよね。
>JRのサンライズ・エクスプレス
自動車のデザインをこぴってますからあながち??(笑)それにしても、これはどこを走っている列車かしら?見たことないなぁー
投稿: たいむ | 2008.09.28 09:50
たいむさん、毎度!
批判的な記事にもかかわらずコメント感謝です〜〜。いや、私も楽しみはしたんですよ。しかし、あの難民たちのシーンがあったからかえってカチンと来たというか。
えーと、サンライズエクスプレス、実は私も見た事がない。かつてのブルートレインのかわりに夜行列車として登場したらしいんですけどね。
投稿: よろづ屋TOM | 2008.09.28 21:52
こんにちは
うわー,超辛口ですねー
でも正論だから,何も言い返せないわ~\(;゚∇゚)/
アメリカの戦争に対する感覚とかって,よくわかりませんが
敗戦を知らない国の傲慢さはいつも感じますよ。
原爆の後遺症のこととか,一般アメリカ人にも広く知ってほしいですよね。
トニー・スタークのキャラの軽さは,バットマンとかとは正反対で
かえって割り切って楽しめましたよ。
それにしても,言われてみればアイアンマンって「新幹線顔」ですよね。
投稿: なな | 2008.10.25 09:44
ななさん、ごめんなさいね〜、アンチ意見で。
観る角度が違うと言われても仕方ないんですけどね…こんなご時世に、いや、こんなご時世だからこそ“たかが映画”がちゃんと生命の大切さを描くべきだと思うんですよ。
それはけっして動物愛護系のお涙頂戴ネタとかじゃなく、“戦う”ということの裏の意味を描かないと意味がないんですよ。
逆に、生命を奪うということの意味を描くことでそれが叶うと思うんです。
今のままでは、アメリカはいつの日かソ連のように分解するでしょうね。
投稿: よろづ屋TOM | 2008.10.28 00:03