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2008.02.14

最後の映画の神様、市川崑ついに逝く…巨星墜つ。

ビルマの竪琴
 帰りの電車で携帯のニュース配信で知りました。偉大な映画の神様がまたひとり、天に還ってしまわれました。

 まあ、ウソみたいなチェーンスモーカーだったし、高齢だったのである程度覚悟はしていましたが、やはり惜しい。ほんとに、まだまだ最後の映画の神様の新作を観たかった…
 (TдT)
 

 はじめて『市川崑』という名前を意識したのは、中学の頃テレビで放映していた『木枯し紋次郎』でした。
 中村敦夫氏の出世作でもあり、「あっしにゃ、かかわりねぇこって…」という台詞、そして故・芥川クロージングナレーションの「天涯孤独な紋次郎が何故、どういう経路で、無宿渡世の世界へ入ったかは、定かでない」の“定かでない”は流行語にもなったほど大ヒットした作品です。
 とにかく当時も今も、“時代劇”といえば軽々しいチャンバラ遊びでしかない安物の番組だらけの中で、唯一と言っていいリアルな斬り合い、しかもルール無用のヤクザ刀法を斬新な構図と大胆なカット割りで迫力たっぷりに描いて見せたビジュアル、そしてなんといってもシニカルで渋い大人の脚本が、当時坊主頭(それから35年を経て今また坊主ですが)の中学生だった私にどれほど衝撃を与えたことか!

 もっとも、この番組のあまりの快進撃に危機感を持ったライバル局が半年後にぶつけてきたのが『必殺仕掛人』であり、やがて視聴率も取って代わられたものの、当初は渋くてかっこよかった『必殺』もシリーズを追うごとに既製の安物時代劇と同等かそれ以下のくだらない番組に墜ちてしまったのはホントに皮肉な話ですが。

 そして高校生になった頃大ブームとなった、『犬神家の一族』をはじめとする一連の金田一耕助ネタ。
 昨年リメイクされたのも記憶に新しいですが、サスペンスである以前に、とにかくよくぞこんな構図を考えるなあというシーンの連続で、画面レイアウトの教科書といっていい作品揃い。

 で、専門学校の学祭でやってた無料上映会で友人に誘われるままになりゆきで席に着き、見終わったあとにあまりのショックでいまだにリアル系戦争映画としてはこれを越えるものはないと私が信じている『野火』。じつはこれも市川崑監督だったんですね。
 ご存じない方のためにチラ、とご紹介すると、太平洋戦争(第二次世界大戦と呼ぶ人もいますが、アレはたしかに太平洋戦争と呼ぶべきです)末期、ガダルカナル島で繰り広げられた日本軍の無謀な自殺的作戦の末路を描いたもので、役者たちの真に迫った演技、卓抜した演出はまるで自分がその地獄の中にいるかのように錯覚さえしてしまうほどの鬼気迫る作品。
 ハリウッド式のドンパチではなく、死(それも餓死、病死)を目前にしながら死にきれない、亡霊のような兵士達の描き方に戦争の本当の怖さが全身を貫く傑作です。

 そして私が社会人になってまもなくの1985年、『ビルマの竪琴』リメイク版。
 主役の中井貴一は当時24歳、真田広之や柳葉敏郎、私と同い年。前年、『連合艦隊』で若き零戦パイロット、それも神風特別攻撃隊の一員としてデビューを飾るのですが、ほかのどんなベテラン俳優や当時売れっ子だった若手俳優たちなどよりもはるかに存在感があり、彼一人だけが本物の兵士に見えたんですね。
 そんな彼が主演する。しかも、かつて一度だけ旧作を観た経験があっただけに、とにかく観たかった。───そして、私のベスト10の一本となったのです。

 『ビルマの竪琴』拙作映画ブログ:よろ川長TOMのオススメ座CINEMAの記事→■■■

 すぐれた映画監督にはクセというか、その雰囲気だけで署名を見ているかのような特徴的な映画を撮る人がいますが、市川監督はまさにそれ。
 小津安二郎が細かなカット割りで鳴らしたように、市川崑は会話の切れ目や、重要な間を取るのに突然のように雄大な風景やざわめく竹林を入れたりするんですね。
 そして観客がドキリとするような部分アップ。
 これって、ガンダムなどでも使われている手法なんですよ。いや、むしろ映画よりもアニメのほうにそうした映像芸術の魂は受け継がれています。

 市川監督、ほんとにたくさんの感動をありがとうございました。お疲れ様です。
 でもこれで、最愛の奥様であり名脚本家だった和田夏十さんとまた天国で手を携えて新作が創れますよね…ご冥福を祈ります。
 

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