『ファンタスティック・フォー2~銀河の危機』キャラクター不安定、未完成作品
これまた、いち早く観させていただいたんですが…
前作もそうでしたが、とにかく四人のキャラが全然立ってないんですねえ。
それぞれホントに魅力がない。ここまでつまらない連中ってちょっと珍しいのではないでしょうか。
肝心カナメの悪役にしても「おまえ一体何がしたいねん」って後ろからハリセンで頭をぶっ叩きたくなるほど存在が無意味。
前回もひどかったけど、今回のは輪をかけて意味不明。
脚本が未完成のまま無理矢理映画に仕立てたような出来なのには呆れると同時に、そんな出来でも大金をつぎ込むことができる資金背景の強引さが羨ましいほど。
まずひっかかるのが、化け物になってる四人に全く悲愴感がないこと。
これは原作が誕生した当時、アメリカでは『放射線を浴びる』と『変異(ミューテーション)する』ことをあり得ない程ポジティブに描いたコミックが横行していることと無関係ではないのでしょうね。
核エネルギー=被爆=放射線障害…の恐ろしさを遺伝子的に刻み込んできた日本人とは対称的です。
奇妙なことに、同じ1950年代のSF映画の世界では『宇宙水爆戦』『博士の異常な愛情』など、核戦争そのものや核戦争後の狂った世界を甘チャンなりにも取り扱った作品が数多く創られているんですねえ。
これは証拠のない私見ですが、アメリカでは広島の核爆弾“実験”の当時から、“ミクロ放射線爆弾”劣化ウラン弾常用の今日まで、核戦略を正当化かつ日常化するための布石として“核は安全で放射線すら危険なものではない”という意識を植え付けたかったのではないでしょうか。
もしかしたら太平洋戦争中はともかく、戦後になって映画の内容にはあまり規制が加えられなくなったものの、「子供が読むため」という理由で検閲が厳しくできるコミックなどにはそれが容易かったのではないかと。
しかしそれにしても、こんなになんにも悩まないミュータントは異常。
逆に結婚騒動ごときで彼らがマスコミ的有名人として扱われている割に、衆目が集まっているようでもないし。
マスコミが騒いでいるときも、背景でいかにもエキストラで集めてますよ、としか見えない民衆が滑稽。というか、事件発生の時でも民衆は民衆、彼らは彼ら、政府は政府でみなバラバラの世界みたい。単に存在しているだけで、まったく絡んでないんですね。
四人に関してもそれが言える。岩石男は単なるイチビリのおっさんで存在すら無意味だし、弟の火男は中途半端すぎてプレイボーイにも見えない上に鉄砲玉馬鹿にもなりきれてない。
ゴム人間はリーダーらしいけど、こんなに魅力のない人物って珍しい。天才か何かしりませんが、何でもアッサリ解決しすぎですし。透明の姉ちゃんも感情的な割にボーッとしてるし…
やっぱり、まったく練ってないんですね。キャラも主題もシナリオも。同じアメコミネタでも『X-MEN』シリーズはまだずっとマシでしたね。
これでは役者もやりにくかったろうに。
シナリオが悪いのか、監督が無能なのか。
こんなのに大金はたいて…もっと日本にはお金かけて作って欲しい傑作原作コミックや小説がナンボでもあるのに。
ああ、もったいない。
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コメント
こんにちは!いつもありがとうございます!
ホント、もったいない、、、
1作目は、その「悩まない明るさ」が新鮮で、
結構楽しんだのですが、、、
いぁいぁ、仰るとおりですね。
もうこれ以上、いらね。
投稿: 猫姫少佐現品限り | 2007.09.29 12:28
今回は意見が合いましたねえ、姫少佐。
しかし無数のB級映画をご覧になってきた姫少佐でもフォローできないとは、つくづく魅力のない映画なんですなあ。
でもこーゆーのに限って、オトナの事情でまた続編できたりして。
投稿: よろづ屋TOM | 2007.09.30 03:22