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2006.11.07

『トンマッコルにようこそ』着眼が良いだけに惜しい。

Tonmackol_1
 映画に関しては『オススメ座シネマブログ』ってのを書いてるわけですが、あっちはあくまで“オススメ”なので、せっかく観ても「あれ?これはチトちゃうぞ」「うわっ、おっしーな…」って作品に関しては何も書けないんですな。
 …ってことで、これからはそーゆーのも書いてしまおうと思うのです。

 ちゅーても、できるかぎり批判にならずに、んでもってやはり可能な限りネタバレに繋がりにくいように…というのは踏襲しようかと。

 で、『トンマッコルにようこそ』なんですが。
 

 とにかく、かなりの方が褒めちぎっているんですよ。わからんでもないんです。感動するようなつくりになっているから。筆者も予想通りの話運びとはいいながら、前半は安心して観ていられたし「エエ話や…」と心に染み入ってました。
 実際、カン・ジェヨンにシン・ハギュンは巧い。『ガン&トークス』で競演した頃から比べてもはるかに厚みのある演技で魅せてくれますし、前半の脚本の根底に流れる空気感や考え方には本当に共感させられます。
 だけど、後半がいけない。

 韓国(というか朝鮮半島)にはウリ思想というのがあるのだそうで。
 ウリ、とは我々、私たちという意味ですが、要するに自分の身内扱いの人たちを自分もひっくるめて表現する言い方です。対して、ナンというのが他人やよその人、つまり“ウリでない他の人”という、人間関係を見事にバッサリと二分する考え方なんですね。

 映画でも「なあ、これからはあんたのことをアニキって呼んでいいかな?」って訊ねるシーンがあります。ほかの韓国映画やドラマでも、血のつながりが無くても「姉さん」「兄さん」って呼び合っているシーンをご覧になったことがあるでしょう。
 で、その関係が成立した後は、気持ち悪いくらいベタベタな関係になるんですね。その切り替えはまるで見えないエネルギースクリーンを突破するか否かというほど極端。
 その逆パターンになると、異常なほど憎み合い、果ては同じ民族がイデオロギーの違いを隔てて半世紀以上も戦争状態を続けるまでになるわけです。

 『トンマッコルにようこそ』がそのことを揶揄したためにこういう話の構造なのかもしれませんが、いがみ合い、憎み合っていた南北の兵士が日常生活のエピソードを通じて心をかよわせることができたなら、何故それを最後まで貫いてくれなかったのか、と残念でならないのです。
 ついこのまえまで互いが互いの標的でしかなかった関係が“昨日の敵は今日の友”になれたのなら、あとからやって来た兵士達でも同じ事が言えたはず。

 なんで彼らだけは悪役として描かれるんでしょう。たしかに主人公たちよりも暴力的には違いありませんし、彼らが村を襲う外敵だとしても、村人の反応からして最初登場したときの村とは違っているのが、脚本上で最初から敵として描こうとしている意図がどうにも腑に落ちないのです。
 そして、かつてのナンはウリとなり、新たなナンに対して立ち向かってゆく…
 これでは単に小さな徒党同士がくっついて大きな抗争に発展したに過ぎないでしょう。

 「おれたちにはこれしかできない」という台詞を「殺し合うことしかできないんだ」と逆説的にとらえ、全体を皮肉として描いたのだと受け取ろうとも考えましたが、それにしては韓国式ドラマ手法の代表である“お涙頂戴”と“ヒロイズム”が強すぎて、納得しきれませんでした。

 なんで後から攻めてきた連中も同じように受け入れる話にできなかったんでしょう。
 韓国の男たちは、国を守るためには命を賭けるべきだと考える人が多いようです。しかし自己犠牲は美しく見えても、所詮人殺しを人殺しでしか解決できない考え方では、朝鮮戦争は永遠に続くでしょうし、この作品がそう言いたいのならば、ヒロイズムはかえって根底にある問題を見えなくしてしまいます。
「守るもののために命をかけて戦う」こと自体は尊いはずですが、トンマッコルという村の存在においては前半の『敵も味方もなく全て受け入れる』からこそ尊いのだ、という考え方を貫くべきでした。それこそがジョン・レノンじゃないですが、『愛』であり、朝鮮戦争終結に必要なものなのではないかと。
 キリスト教徒の多い韓国人。
 キリストは「汝の敵を愛せ」と言ったのでしょう?

 かの『JSA』は、敵同士(ナン)→秘密の仲間(ウリ)→誤解から敵対(ナン)を経て、やはり心の底ではウリを貫いていたことが最後に哀しい形で判るからこそ傑作だといえるのです。
 俳優たちの演技の巧さに助けられているけれど、この作品はテーマを見失ってしまったように思えてなりません。
 ということで、この映画は『ほんまに惜しい』映画です。

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◆ブツクサ座CINEMA《ぼやき版》」カテゴリの記事

コメント

こんばんは!
あはは、、
意見が違っても、良いじゃないですか!
この映画を、ハッキリと、戦争美化という方もいらっしゃいますし。

投稿: 猫姫少佐現品限り | 2006.11.11 23:51

■よろづ屋TOM さん

こんにちは。
こちらのブログを主催されている方と
よろ川長TOMさんは
同じ方だったんですね。
きちんと読んでいれば分かったのに、
申し訳ありませんでした。
TBまでしていて気づかないなんて、
お恥ずかしい限りです。
今後もよろしくお願いします。

投稿: えい | 2006.11.12 11:25

猫姫様…あっ、カキコ名乗りではやはり少佐殿でありますね。
(/^^)/ コメントありがとうございます!

≫戦争美化という方もいらっしゃいますし。

う。さすがにそれは違うと思うけど…(v_v;

投稿: よろづ屋TOM | 2006.11.12 11:55

えいさん、わざわざありがとうございます。

≫こちらのブログを主催されている方と
よろ川長TOMさんは同じ方だったんですね。

(;´д`;)いやあ、ははは、ちゃんと明記しなかった私がいけませんでした。最初は本家ホームページ内の掲示板と映画コンテンツだったので洒落の変装気分で名乗りを変えてたのをブログ化したのでこうなったんですよ。
てなことで、どっちもよろしくおねがいします。
m(_"_)m

投稿: よろづ屋TOM | 2006.11.12 12:03

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